A2古生物の研究
Study on Prehistoric Life

レプリカとは

 

古生物学におけるレプリカ標本とは、美術品などにおける「レプリカ(複製)」とは異なり、実物標本をシリコン樹脂で型どりし、石膏やプラスチックで成形したものである。形や大きさはもちろん、凹凸の細部に至るまで、化石に残された情報がコピーされているものであり、その形を観察する上では、実物標本と同じ役割を果たすものである。人の手によって作製された「にせもの」とは異なり、その標本がもつ情報に関しては「本物」の資料なのである。

骨化石は、化石化の過程で内部に鉱物が成長し隙間を充填しているため、重量が増加すると同時に、柔軟性が失われ脆弱になっている。このような状態の化石を組み立てたりすることは化石に大きな負荷をかける。標本の支え方を間違えると自重で折れてしまうこともある。そのため、通常、大型動物の全身骨格を復元する際には、プラスチックなどを素材とした軽いレプリカ標本が使用される。これによって、その動物の生息時のいきいきとした姿勢を復元できるのだ。

このような正確なレプリカ標本は研究のためにも使用されている。比較解剖学的研究においては、多くの標本を観察する必要があるが、正確なレプリカ標本は、形質データの取得に十分に役立つ。最近、骨化石の組織学的研究のために、実物標本を切り取り観察試料(薄片)を作製することが盛んに行われているが、失われる部分を補うものとして、レプリカを埋め込みその形状を保存するようにしている。

また、レプリカ標本は、化石が商業目的で売買されることを防ぎ、世界中の人々が多くの場所でその化石の持つ魅力に触れる機会を作り出している。博物館などが実物標本の購入を行うことは、商業的に採掘される化石を増やし、場合によっては盗掘や不正売買を助長することを忘れてはならない。

このように、レプリカ標本は、実物標本の代わりに展示や研究に使用され、実物標本を守る役割を担っている。化石のレプリカは単なる「にせもの」ではないのである。

※使用する樹脂によっては収縮率の高いものもあり、寸法に誤差が生じることもあります。

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